論文種別 原著論文
言語種別 日本語
表題 難治性の慢性痛患者に対するペインマネジメントプログラム 痛みの主観的改善度に影響を及ぼす因子の検討
掲載誌名 正式名:Pain Rehabilitation
ISSNコード:2186-2702
巻・号・頁 5(1),28-35頁
著者・共著者 井上 雅之;池本 竜則;井上 真輔;中田 昌敏;西原 真理;新井 健一;河合 隆志;宮川 博文;長谷川 共美;下 和弘;櫻井 博紀;長谷川 義修;山口 節子;畠山 登;牛田 享宏
発行年月 2015/03
概要 組織損傷の治癒にも関わらず長期間持続する痛みは、苦痛、不安や気分の落ち込み、恐怖などを増大し、ADL、QOLを著しく低下させ、日常生活の破綻を招くケースもみられる。この背景には疾病利得、医療不信、kinesiophobia、うつ病、破局的思考などの心理・社会的要因が混在し、痛みの増悪、遷延化に関与していることが挙げられる。我々は、難治性の慢性痛患者に対し、諸外国にて広く普及しているペインマネジメントプログラムを実施し、良好な成績を得ている。このプログラムは認知行動療法と運動療法を組み合わせたものであり、痛みについての理解を深め、痛みのセルフコントロール及びコーピングを学習し、また不活動によって低下した身体機能の改善により、ADL、QOLの向上を目指すものである。今回、本プログラムの参加者64名を対象に、痛みの主観的改善度に影響を及ぼす因子を探索することを目的として、主観的改善度により2群(改善群、不変・悪化群)に分類し、(1)プログラム前における痛み、心理・精神機能、身体機能などの評価指標の群間比較、(2)プログラム前後における各評価指標の群内比較を行い、後方視的に分析、検討した。その結果、検討項目(1)では、PCS、拡大視は不変・悪化群で有意に高値となり、破局的思考が強い傾向を示した。また検討項目(2)では、ほぼ全ての心理・社会機能、身体機能の評価指標において、改善群は効果量大を示した。不変・悪化群において、破局的思考、反芻、生活障害度、運動器障害度、身体機能などは効果量大を示したが、改善群と比べ、身体機能の効果量は小さい傾向であり、また不安、自己効力感、QOLは効果量小であることから、これらが痛みの主観的改善度に影響する因子であることが推察される。本結果より、不変・悪化群において、痛みに最も強く影響するとされる破局的思考に大きな改善を認めたものの、不安、自己効力感、QOLの改善はわずかであったことから、教育において実現可能な目標設定、修正方法のきめ細かな指導を実施し、目標を段階的に達成させることにより自己効力感を向上し、不安の軽減及びQOLを改善させることが必要と考える。また、痛みの主観的数値そのものを軽減させることよりも、痛みに伴う身体機能の低下を改善することにより、高い主観的改善感の獲得に繋がると推察する。(著者抄録)